これまで、人間は暴力と共にあり「いかに暴力をリアルに見るか」ということを考えてきた。ボクシングやプロレスといったスポーツ化された暴力は、観客が安全にその場の臨場感や高揚感を体感できるため人気となり、ジャンルとして確立された。

　しかし、動画サイトから現実に起こっているケンカの様子が常時閲覧可能になったことで、遠くからその現場を見ることが可能になった。動画内での撮影者は気づかれると危害を加えられる可能性があるので被写体をまともに写すことができない状況にあり、被写体の動きや目線を伺いながら撮影者は遠目からカメラを起動することが多い。しかし、アップロード機能を持っているカメラ付きスマートフォンは誰に対しても「見世物」のような立ち位置にしてしまう可能性を持っている。これが、人間が今まで求めてきた暴力のリアルさの現在なのかもしれない。